鉄鋼専門商社の業界研究と大手5企業(メタルワン・伊藤忠丸紅鉄鋼・日鉄住金物産・JFE商事・阪和興業)の年収や激務度や人気ランキング
そもそも専門商社とは
専門商社の役割とは商社として特定の商材での売上が50%以上を占めている企業が専門商社として定義されます。
ここで軽く補足しておくと、そもそも商社の役割は生産者と消費者の仲介です。商社の価値は生産者が消費者との商流の間に商社を通せば一度にたくさん売ることが出来ます。
この生産者と消費者の間の仲介手数料が商社の利益になります。
さらに大手の総合・専門商社は生産者と買い手をつなぐ中で、他にも以下のような機能を担っています。
▼商社の役割
・情報の提供
・金融面でのサポート
・物流の効率化・面倒ごとの代行
・マーケティング戦略の提供
要は単にモノを右から左へ流すだけでなく、上記のような機能で更なる付加価値をつけています。
総合商社はこれを全世界であらゆる商材で行っているという点で総合商社です。一方、専門商社は機械・鉄鋼・化学品・医薬品・食品といった特定の商品(50%)に特化しています。
鉄鋼商社のランキングと種類
専門商社に関する就活生のよくある質問をさっくり解説します。次のような疑問は湧かないでしょうか?
総合商社と専門商社はバッティングしないの?
デカいメーカーなら専門商社ぐらい作れないの?
▼専門商社の種類
・総合商社系
・メーカー系
・独立系
商社の種類として上記のように総合商社系、メーカー系、独立系の3種類に分類されることが多いです。総合商社系は元一事業部だったのが独立したとか、総合商社が出資して作ったというルーツが総合商社から派生したパターンです。メーカー系も同じです。独立系はその名の通り自分らで事業をやってきた会社です。
鉄鋼専門商社業界の2018年度の売上ランキングと分類をざっと紹介します。
・メタルワン:1兆9740億円(総・非)
・伊藤忠丸紅鉄鋼:1兆9689億円(総・非)
・日鉄住金物産:1兆9308億円(メ・上)
・JFE商事:1兆7564億円(メ・非)
・阪和興業:1兆5118億円(独・上)
・神鋼商事:7913億円(独・上)
・岡谷鋼機:7854億円(独・上)
※総は総合商社系、メはメーカー系、独は独立系。上と非はそれぞれ上場か非上場かを示します。
鉄鋼専門商社の業界上位5社について解説
鉄鋼商社業界の有名な上位5社について詳しく焦点をあてて解説します。
メタルワン
三菱商事60%、双日40%の出資で2003年に出来た総合商社系の鉄鋼商社がメタルワンです。会社ホームページによると事業部は以下の通りです。
第一営業本部:重工業向け
第二営業本部:自動車、電機産業向け
第三営業本部:海外に特化。油田やインフラ事業向け
線材特殊鋼・ステンレス本部:-
伊藤忠丸紅鉄鋼
丸紅と伊藤忠商事が2001年に50%ずつ出資して作った総合商社系の鉄鋼専門商社です。同じ総合商社系ですが、メタルワンと伊藤忠丸紅鉄鋼では、1つだけ大きな違いがあります。
伊藤忠丸紅鉄鋼は発足時に伊藤忠と丸紅の社員が「転籍」して退路を断っているのに対して、メタルワン発足時は双日社員だけが転籍し、三菱商事社員は「出向」になった人が多いです。
社内の一体感:メタルワン<伊藤忠丸紅鉄鋼と言えます。どちらも総合商社の子会社ですが、位置づけ的には本社の鉄鋼部門がスピンアウトしているだけですので本社と対等です。
日鉄住金物産
これはその名の通り新日鉄住金系列のメーカー系の鉄鋼専門商社です。ただし、東証一部上場で、新日鉄住金の持株比率は約36%(ちなみに2位は三井物産の約11%)です。
当然新日鉄住金の製品を基本的に扱いますが、加えて原燃料(石炭とかコークス)の調達もやっているのが総合商社系との違いです。そして意外なことに繊維や食糧事業もやっています。以下にセグメント別売上高と経常利益の構成比率を参考にしてください。
JFE商事
もちろんJFEの系列のメーカー系商社です。ただしこちらはJFEホールディングスの事業会社で非上場です。やっていることは日鉄住金物産と同じように、JFE
のサプライチェーン全体に絡みます。ホームページにあった図を紹介しておく。
▼JFE商事も鉄鋼以外の事業
・船舶・産業資材
・食品(川商フーズ)
・エレクトロニクス(JFEエレクトロニクス)
・テールアルメ
配属リスクもあるので志望動機は偏らないように注意しましょう。
阪和興業
ここは独立系の鉄鋼専門商社です。独立系でメーカーなどのホワイトなルーツがないので激務で有名なのが特長です。
▼阪和興業の事業一覧
・鉄鋼事業
・金属原料事業
・非鉄金属事業
・食品事業
・石油・化成品事業
・海外販売子会社
・その他の事業(機械とか木材)
株主向けレポートから阪和興業のセグメント別売上高構成比を紹介します。
阪和興業の中期経営計画によると、戦略投資で事業拡大を狙っていることがわかります。総合商社系や2大メーカー系に匹敵する規模はあるし、阪和興業は“総合商社”っぽさを追求していくのかもしれないです。少なくとも鉄鋼や金属だけだといつまでも安泰な保証はないので、事業の多角化は正しい舵取りだと思います。
鉄鋼業界の商流とバリューチェーン
商社を理解するのに1番のすすめの『新・現代総合商社論』から重要な点をピックアップして解説します。
まず、鉄鋼バリューチェーンを図表しました。
まず、最初の事業投資の部分では鉱山を買って地面を掘るのだが、海外の資源メジャーや他商社と共同で出資するという形態をとり、出資比率に応じて権益を得ます。
こうして得られた原料は世界中の製鉄メーカーに供給されます。原料を日本の製鉄メーカーにわたす部分は三菱商事RtMジャパンという会社がやっているそうで、メタルワンは加工された製品を最終需要家に届ける部分を担います。確かにメタルワンは川上の部分はやっていない。
鉄鋼専門商社を受ける就活生は、常にバリューチェーン全体を意識しながら業界を見るのがおすすめです。そうすれば各社の違いや、業界内での力関係が浮かんできます。
鉄鋼専門商社の年収・激務・残業について
まずはVorkersから月平均残業時間、そしてこのサイトから平均年収を引用しました。
メタルワン:52.6時間・1160万円
伊藤忠丸紅鉄鋼:39.4時間・1106万円
日鉄住金物産:53.8時間・970万円
JFE商事:39.0時間・966万円
阪和興業:52.7時間・1009万円
商社・鉄鋼のどちらにも激務で飲み好きなイメージがあると思います。
これがフュージョンした鉄鋼専門商社はもちろん飲み&激務である。
基本的に「平日はプライベートなんて無い」「接待・ゴルフもある」「ノー残業デーに飲みに行く」といったコメントが多数派でした。たまに「部署による」「時期による」「上司による」といったコメントや、「プライベートも十分確保できてます」といったコメントが散見されました。
鉄鋼専門商社の分析|まとめ
就活生へのアドバイスとして
とにかく自分の軸を明確にしましょう。
自分の軸を明確にして会社の志望度ランキングを作り、志望動機でオリジナリティを示しましょう。ぶっちゃけ鉄の製品で差別化するのは難しいです。したがって、会社間で一目瞭然な違いを挙げて志望理由にするのは難しめだ。
総合商社、鉄鋼メーカー、そして鉄鋼商社間での違いを自分なりに解釈し、「自分にはこういう理由で御社が一番」と言えるように準備しましょう。実を言うと、商社は「人が全てです」とやたら人間性推しをしてくるので「先輩やOB訪問で会った社員が魅力的だった」というのを面接で決め手として話すのは全然構わない。
そのため商社を受けるならOB訪問の数はこなしましょう。
・関連記事:OB訪問に行く意味と必要性!OBの探し方とOBがいない時に役立つサイト
もちろん、「バックにいる総合商社やメーカーに縛られずにビジネスをしたいから独立系」とか「グローバルに大きなことをしたいから総合商社系」という鉄板ネタでもいいです。ただし、「なぜ君はそう思うの?」と聞かれて自分だけの理由を答えられるようにするのはマストです。
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