総合商社とは?総合商社のビジネスモデルと仕事内容を新・現代総合商社論から解説

 

総合商社のビジネスモデル解説

 

 

 

 

今回は就活生のアイドル総合商社様のビジネスモデルについて解説しよう。男子就活生なら一度は「三菱商事の○○です(キリッ」と合コンで名乗りを上げて、女子たちを喰い散らかす妄想したことがあるだろう。明るい未来()を妄想して楽しむのは自由だが、妄想を現実に叶えたいでしょう?なら頭を使わなきゃ。

 

 

 

「総合商社のビジネスモデルとは?」と聞かれてきちんと答えることができるだろうか?

 

 

 

「は?なめんなよ。トレーディングと事業投資だよ(ドヤ」くらいのことを言える就活生は多いだろう。ただ、それはで残念ながら理解が浅すぎる。

 

 

 

間違ってはいないけれど、毎年商社に押し寄せては祈られていく有象無象の就活生たちと差別化したいだろう?じゃあ、もう一歩進んだ深い理解が必要だ。そこから商社でしか出来ないことを自分なりに考えれば説得力のある志望動機になる。「トレーディングと事業投資の両輪でバリューチェーン構築ガー」などとわかったフリしてホームページを棒読みするのは今日で終わりにしよう。

 

 

 

という訳で、今回は就活生にとって神に等しい三菱商事様の役員様たちの御言葉が書かれた『新・現代総合商社論』という聖書を使って商社のビジネスモデルを見ていこう。

 

 

総合商社とは

 

「そんなの知ってるもん。カップラーメンから人工衛星までってやつでしょ(ドヤドヤ」

 

 

 

はいはい、33点です。おめでとう。

 

 

 

33点ってのは、総合って言葉の3つの意味のうち、1つしかわかってないからだ。

 

 

 

総合商社の特長-3つの総合性

 

商品の総合性

地域の総合性

機能の総合性

 

商品の総合性 

カップラーメンから人工衛星まで(会社によってカップラーメンじゃなくてミネラルウオーターだったり色々あるけど)ってのは商品の総合性のことね。残りの2つもきちんと理解しておくと、商社の企業研究で一歩進んだ見方が出来る。

  

地域の総合性

世界のあらゆる場所でビジネスをしてるってことだ。ただ、会社によって得意な地域が異なる。例えば伊藤忠商事が中国で圧倒的に強いとか、三井物産がブラジルで強いというのがわかりやすい例だ。

 

どの商社も似たようなビジネスをしているように見えても

 

「どこの地域がメインなのか」

 「これから伸びると予想される地域に強いのはどの商社だ」

 「この地域にはこういった地政学リスクが予想されるが、どういった対策を考えているのか」

 

などなど深く掘り下げる余地が一杯ある。各商社の得意な地域や進出しようとしている地域を調べ、自分なりにあれこれ考えていれば疑問が湧いてくるはずだ。それをOB訪問で聞いたり、面接の逆質問でぶつけろ。社員もいい質問をされれば色々語りたくなるもので、好印象を得られるのは間違いない。

  

機能の総合性

トレーディングやら事業投資やらバリューチェーンなどと言葉が並んでも、やっぱり何してるのかよくわからんのが商社に対する就活生のイメージだろう(高給・モテる・激務などはわかりやすいだろうが)。という訳で、商社の機能をわかりやすく説明する言葉を教えよう。

  

FILM

 

F…Finance(金融)

I…Information Technology(情報)

L…Logistics(物流)

M…Marketing(マーケティング)

 

 

この4つの視点から商社がやっていることを見ていくと、商社のビジネスの意義がわかる。次の節でトレーディングを例に見ていこう。

 

  

あらゆる面倒ごとを引き受けるトレーディング

さて、ここでは小麦農家と小麦から飼料を生産する会社を例にとって、トレーディングとFILMについて解説しよう。

 

 

 

よくトレーディングの説明ではAからBへモノを流す、その際に口銭として頂く手数料が商社の儲けなどと言うが、話はそんなに単純ではない。まあ、筆者もその辺のことを何も言わずに「商社なんて仲介人」と言ってきたので、ここらできちんと説明しておきましょう。

 

 

 

F…Finance(金融)

単純なトレーディングの説明では、農家から小麦を100円で買って、飼料生産会社に105円で売るから商社の儲けは5円みたいに説明されるが、現実ではそんなにするっとお金が流れない。

 

 

 

飼料生産会社は工場を建てたばかりで、金がないかもしれない。もし直接農家と取引をしていたら、「金が払えないなら売らないよ」と言われるかもしれない。せっかく工場を建て、生産能力があるのにビジネスを行えないわけだ。

 

 

 

だが、間に商社が入れば、とりあえず農家への支払いは商社が立て替え、ツケとして飼料生産会社から後で返してもらうという取引が出来る。農家にとっては、よくわからん会社と直接取引をするのではなく信頼できる商社を通すことで金の心配がなくなるし、飼料生産会社も金がピンチでも事業を続けられる訳だ。

 

 

 

余談だが、金と資産や借金の感覚(つまりバランスシートの観点から物事を見るセンス)は持っておいた方がよい。現時点で金を使わない人から金を集めて、今必要な人に貸すのが銀行の存在意義だし、借金が必ずしも悪いとは限らず、適切な借金によって資産を増やすことでビジネスを拡大できるのだから。

 

 

 

よくわからない人は、住宅ローンを考えるとよい。あれも立派な借金だが、ローンがなければ、多くのサラリーマンは退職目前までマイホームなんか買えない訳だろう?

 

 

 

話がそれたが、金や資産の感覚を持っていると、商社のリース事業なんかも違った見方が出来る。特に、銀行も志望している就活生は金融の勉強をしておくとよい。

 

 

 

Information Technology(情報)

この書き方だとITみたいに聞こえるけど、コンピューターを使う所謂ITの話ではない。普通に情報の意味だ。

 

 

 

農家と飼料生産会社の例を再び使おう。そもそも農家は小麦を作るのが本業だし、飼料生産会社の本業だってより良い飼料を作ることだ。だから、それ以外の情報には疎い訳。そこで、商社が自分たちのネットワークやこれまでの知見の積み重ねから情報を提供することで、取引をサポートするのだ。

 

 

 

例えば、海外の相手と取引したいけど、税制度やら輸出入の手続きやら色々面倒過ぎて自分では無理ってなったとしよう。ここであらゆる面倒なことを商社がサポートしてくれるなら、農家や飼料生産会社は今まで通り普通に売り買いするだけでOKみたいな感じだ。

 

 

 

Logistics(物流)

農家から小麦を仕入れて飼料生産会社に売ると一口に言っても、実際は輸送やら貯蔵やらをどうするか考えないといけない。農家は陸運会社や海運会社の乗り物をチャーターする方法なんか知らないし、飼料生産会社も倉庫を必要とするが、倉庫業界の事情やら交渉は商社に任せた方が楽だ。という訳で、物流でも商社が面倒なことを引き受け、取引を円滑にするのだ。

 

 

 

Marketing(マーケティング)

これは情報の機能と近い要素がある。農家が自分で新たな販売先を開拓したり、売り方の工夫をすることは難しい。また、例えば飼料生産会社が海外展開をしたいとなっても、いきなり初めての地で誰にどうやって売ればいいかなんて全く分からない。

 

 

 

ということで、商社が自分たちのネットワークやこれまでのノウハウの蓄積から売る相手を見つけてくれれば、生産者は安心して製品作りに励むことが出来る。

 

 

 

商社の事業投資とバリューチェーン構築

上記のトレーディングの話では、農家はそんなの出来ないから商社が代わりに~とか、飼料生産会社はそんなの面倒だから商社が~と説明してきたが、じゃあ彼らが自分たちで全部できたら商社は要らないの?って思うはずだ。

 

 

 

そう、実はこれまで何度も「商社要らなくね?」と言われてきたのだよ。俗に言う商社斜陽論とか商社冬の時代と言われたやつだ。

 

 

 

という訳で、商社は新しい価値の提供方法を考えてきた。それが事業投資をしてパートナーと一緒に手を動かし、バリューチェーンを構築しましょうというやつだ。

 

 

 

事業投資して取引先に口出しをする

農家と飼料生産会社のたとえ話を見ていたら気付くだろう。彼らに情報与えて色々サポートするんなら、いっそのこと商社が自分でやってしまえばいいのにと。

 

 

 

ただ、商社はあくまでそっちのプロではない。商社マンは農業も工場の操業も専門ではない。したがって、彼らの会社に出資(株を取得して発言権を得るとか、共同で会社を作るなど)して、一緒に経営をしていく。

 

 

 

商社「僕らの情報網によると、今後こんな小麦が売れるぜ。もし作れれば販売は任せて欲しい。作れるか?」

 

農家「やってみる。他にも必要なことはサポートしてくれ。小麦作りは任せろ」

 

 

 

ってな感じで事業投資先とタッグを組んでお互いの強みを掛け合わせて付加価値の高いビジネスを目指すのだ。

 

 

 

バリューチェーンの構築

ここでようやく、なぜ小麦農家と飼料生産会社なんて妙な例を使っていたのかわかる。

 

 

 

飼料生産会社は作った飼料を畜産農家に売るし、畜産農家はニワトリを食品メーカーに売るし、食品メーカーは製品をスーパーやらレストランに売るだろう。商品が原料から最終消費者の手に届くまでには、様々な業者の間をわたり、その中で価値が高められていく。

 

 

 

ここで、総合商社の総合が効いてくるのだ。総合商社は色んな取引をやっている訳で、飼料生産会社と畜産農家の間、畜産農家と食品メーカーの間の取引にも関わっている。ということは、一連の取引の流れの中で、各部分がバラバラに動くより、全体に事業投資をしてコントロールすることにより、効率的で安定した供給を実現させることが可能だ。この一連の供給の流れのことをバリューチェーンという。

 

 

 

実は日本ケンタッキーの運営には三菱商事の息がかかっていて、その一連の流れでこのバリューチェーンの例を見てみよう。下図のようになる。

 

 

 

 

 

商社志望の就活生が勘違いしてはいけないこと

ここまで商社の説明をしてきて、皆さんはどう感じられただろうか?

 

 

 

「やっぱ商社ってスゴイわ。抱かれたい。掘られたい」なんてアンポンタンなことを言っていてはいけない。

 

 

 

あくまでこれは外から見た話で、実際に働くときにこんな広い視点でビジネスを俯瞰できるとは限らない。また、バリューチェーンだって永遠に儲かる仕組みでいられるとは限らない。

 

 

実際に商社で働くとは(仕事内容)

筆者は商社の社員じゃないから、筆者だって実際に商社で働くのがどんな感じなのかはわからない。ただ、確実に言えることは、華やかなビジネスに見えるのは上っ面だけで、実際は地道な作業の連続だろうということ。

 

 

 

例えば、事業投資して作った会社と共同で仕事をするとき、商社マンは出向という形でその会社に勤務することになる。丸の内の綺麗なビルを出て、どこに行くんだろうね。行った先では、いい大学を出て就活頑張って商社に入ったタイプの人間はいないかもしれない。言い方は悪いが、自分とは住む世界が違う人たちと仕事をするってことだ。説明会なんかだと、「出向先では社長になる」とか、「若手でも出向先では部長クラス」なんてアピールされるが、小さい会社で話の通じないような人間たちに苦労し、本社との板挟みにあうという辛い会社生活を送る可能性もあるのだ。

 

 

 

バリューチェーンの次を考えろ

バリューチェーンだっていつまでも儲かる仕組みでいられる保証はない。

 

 

例えば、IT技術を駆使して、農家と飼料生産会社、畜産農家を結ぶプラットホームが出来たとしたら?そこに物流業者や倉庫業者も登録することが出来て、入力された様々な情報から人工知能が最適な取引を実現させる仕組みが出来たらどうなる?

 

 

人工知能に奪われる職業リストなんてのが時折ニュースになるが、商社マンだってランクインする可能性は否定できない。所詮はアナログな世界なんだから。

 

 

 

ということで、むしろ商社に入って自分が新たなビジネスモデルを作るくらいの気概を就活生には持って欲しい。三井物産インターンの趣旨なんてまんまこういうことでしょ?

 

 

 

総合商社のビジネスモデルと仕事内容まとめ

なんだか、最後は『新・現代総合商社論』から脱線してしまった。

 

【新・現代総合商社論の構成】

総合商社とは~プロローグ

総合商社の現在と未来~三菱商事の経営戦略

世界の潮流と総合商社の役割

世界情勢と地域戦略

金属資源ビジネス

天然ガス・LNGビジネス

食料ビジネス

自動車ビジネス

化学品ビジネス

世界のエネルギー問題と総合商社

金融ビジネス

人材開発のグローバル戦略

リスクマネジメント

 

総合商社の機能とその意義はわかってもらえただろうか?これだけのことが理解できていれば、脳筋しか取り柄のない体育会系や、飲みとノリで生きてきたようなチャランポラン就活生には絶対に負けないはずだ。ここで学んだ基礎をもとに、自分で問題意識を持って勉強を継続し、面接官を唸らせるようなビジョンを持った就活生になってほしい。

 

 

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