【業界研究】激務なプラントエンジニアリング御三家を比較|日揮・千代田化工・東洋エンジニアリング

 

プラントエンジニアリング業界

 

 

今回はプラントエンジニアリング業界で御三家と呼ばれている日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリングの3社を比較する記事を書こう。

 

余談だが、「日揮 千代田」などのキーワードでGoogle検索してみたところ、ロクなページがなかった。ということで、今回はガッツリ書いてあげよう。

 

 

 

 

 

プラントエンジニアリング業界のビジネスモデルや特徴

 

3社ともEPC事業でプラントを建設するのが仕事である。EPCやプラントがよくわからんって人は、先にプラントエンジニアリング業界の基礎を解説したこちらの記事を読んで欲しい。この記事はプラント業界の基礎を知っている人を前提にしている。

グローバルで給料が高いプラントエンジニアリング業界って知ってる?

 

売上、利益の双方で1位日揮、2位千代田、3位東洋エンジである。今のところ、日揮が頭一つ抜けている印象だ。具体的なデータは次の章で見ていく。

 

日揮と千代田はLNGプラントが得意であり、一番の稼ぎ頭である。LNGの次は石油関係だ。石油・天然ガス開発においてこの2社の主要なお客さんはオイルカンパニーだ。エクソンモービルのようなメジャー企業、サウジアラムコのような産油国の国営石油会社がお客さんで、彼らが開発してる油田で使うプラントを建てる。

 

東洋エンジニアリングは最近いろいろやらかして、実はけっこうヤバかった(後で詳しく説明する)。ただ、何とか立て直しを頑張っている最中だし、日揮と千代田のように石油関係に偏っているのではなく、化学品や肥料のプラントに強い。

 

日本国内にはもう新たなプラント需要は少ない。建て替えや増築の需要はあるだろうが、3社とも海外がビジネスの主戦場だ。2015年度の海外売上高比率は以下の通り。

日揮:87.6%

千代田:81.8%

東洋エンジ:83.3%

 

業界全体として言えることは、世界経済の調子が良ければ儲かるし、景気が悪くなれば案件を受注するのが難しくなる。で、最近はどうかというと、去年あたりから中国の成長が減速し始めたり、EUがゴタゴタしたり、原油価格が安かったり、しばらくは苦しい展開になりそうだ。

 

プラントエンジニアリング御三家の売上高・純利益・セグメント別売上高の比較

 

 

いきなりグラフを見せちゃうから、まずは各自で考えて見て欲しい。

 

 

日揮の事業内容

千代田化工の事業内容

日揮の事業内容

 

3社の違いが見えてきただろうか?注目するべきは以下のような点だ。

 

原油高で成長してきたけど

3社とも、2011年あたりから売り上げが順調に伸びていることがわかる。みなさんは原油価格について知識はあるだろうか?ここでは深く語らないが、とりあえず2008年頃にかけて1バレル140ドルという歴史的高値になっていた。その後一時的に50ドル以下まで下がるも、再び2011年頃から100ドル付近になり、それが2014年途中まで続いた。

 

しかし、2014年に下落が始まって以来、原油価格は最も低い時で30ドル以下に下がり、20168月末時点でも50ドル程度までしか戻っていない。エンジ会社も今年はまだ過去最高益更新を維持したが、日揮、千代田の両社は2016年度は減益と予想している。

 

繰り返しになるが、世界経済が停滞すればプラントの需要もなくなり、エンジ会社の仕事は減るという事を頭に入れておくように。

 

日揮と千代田はLNGに依存

 

 

その通りだ。セグメント別売上高の円グラフを見ればわかるが、日揮も千代田も売上高の50%くらいをLNGプラントが占める。実はLNGプラントは作るのが難しく、特にでかいLNGプラントを作れるのは世界で数社だけだ。日揮と千代田はこの数社に入っているが、東洋エンジは入っていない。

 

日揮と千代田は最近までLNGのバカでかい案件をいっぱい受注し、成長の原動力となってきたが、今後しばらく世界経済が停滞し、稼ぎ頭を失うと大きく減収になる可能性がある。

 

上で東洋エンジは肥料や化学品に強いと述べたが、こちらはバランスが良いのが円グラフからわかるだろう。その他事業も10%あり、日揮や千代田ほど石油産業に傾いていない。

 

【日揮】収益力が圧倒的に強い日揮

 

 

純利益のグラフを見たらわかるが、圧倒的に稼いでいるのは日揮だ。筆者が就活中に千代田、東洋エンジの社員にこの稼ぐ力の話を聞いたところ、以下のような回答をもらったので、何かの参考にして欲しい。

 

千代田社員「日揮は契約に基づいてシビアにビジネスを進める。一方うちはその辺を自由にゆるくやってしまうので、共同で行ったプロジェクトの後にデータを見てみると、利益で負けている」

 

東洋エンジ社員「日揮は儲けるビジネスのタネを見つけるのが上手い印象だ。触媒事業なんか安定して収益をあげてるし、次は何を探してるのだろう」

 

プラントエンジニアリング業界の記事でも述べたが、とにかくこの業界はマネジメント力がモノを言う世界であり、人が財産である。したがって、業界で強い日揮に優秀な人が集まり、さらに強くなればもっと優秀な人が集まるというサイクルが繰り返され、蓄積されたノウハウに差が出ているのではなかろうか。

 

 

プラントエンジニアリング業界各社の最近の事情と今後の方向性

 

 

3社ともに共通していえるのは、EPC事業ばっかりは良くないねってこと。結局景気に左右されて、不景気の時には仕事が無くなってしまうからだ。ということで、3社ともEPCは続けるけど、その次のビジネスモデルへの転換を目指している。

 

日揮:中期経営計画「Beyond the Horizon」まとめ

 

 

日揮は20165月に新たな中期経営計画を発表したばっかりだ。詳しく今後の方針が書いてあるので、日揮に興味のある就活生はこれを一読せよ。

 

経営戦略 | 経営方針 | 日揮ホールディングス株式会社

 

ここでは就活生向けに簡単に内容を要約しよう。

 

日揮の目指す方向性は「オイル&ガス分野を中心とし、インフラ分野へ事業領域を拡大」と言っている。これは原文のままだ。この記事では原油価格と世界経済の先行きが暗いと繰り返してきたが、そうは言えども長期的に見るとまだまだ途上国が発展するし、石油・天然ガスの需要も伸びる(話のスパンとしては2030年頃までの長期展望だ)。したがって、石油・天然ガス分野のEPCトッププレイヤーとして、まだまだ頑張っていくという訳だ。

 

一方で、やはり石油・天然ガスのEPCばかりに偏っていてはダメなので、新たに以下の点に力を入れていく計画だ。

 

 

プラントの運転やメンテナンスまで関われるようになる

原発、再エネの発電所のEPCを増やす

空港や病院の運営への投資を増やす

 

 

 

日揮の目指す会社像は「Program Management Contractor & Investment Partner」だと明言している。これまでは客に言われたとおりに石油関係のEPCをやるのがメインだったが、EPC事業を行う範囲をもっと拡げ、さらにはプラントの運転や事業投資にまで手を広げることを目指しているのだ。今まで以上に高度なEPCコントラクターでありながら、ある種総合商社のような側面も持つ所まで変わることが出来れば、当分日揮は一流企業であり続けると筆者は予想する。

 

 

 

千代田:日揮と同様

 

 

千代田の中期経営計画は2016年が最終年度であり、来年出る新しいものに注目だ。とりあえず今のところは上の日揮のとこで説明したのと同じような方向性だ。海洋事業(今後は深海の油田を探すケースが増える)に注力する点、海外拠点を充実させるといった点が目立った違いだ。

 

 

東洋エンジニアリング:大赤字の理由と再建を目指して

 

 

さて、いよいよ東洋エンジニアリングの大赤字について説明しよう。上のグラフを見ればわかるが、稼げても数億~数十億なのに、200億の赤字とは恐ろしい(笑)。

 

直接の原因はブラジルのプロジェクトで、向こうの汚職騒動に巻き込まれる不運もあってデカい損失が出たことなのだが、実はもう少し掘り下げると、業界の流れと東洋エンジの苦しい立ち位置が見えてくる。

 

簡潔にまとめるとこういう背景があった。

日揮や千代田はデカいLNG案件でウハウハ

東洋エンジはLNGプラントを作れないから、中規模の案件を取りまくって追いつこうとする

新興国のエンジニアリング会社と価格競争する羽目に

海外拠点に仕事を分担させてコストカットを狙ったが、仕事がグダグダになって損失発生

 

順に見ていくと、①については既に述べた。だから中規模の案件をたくさん取って日揮や千代田を追いかけないといけないのだが、「163月期に4500億円受注」という目標の達成しか眼中になく、採算度外視で受注しまくったそうな(②)。筆者が話を聞いた某エンジ会社の人は「東洋エンジは一時期ダボハゼのようにどんな案件でも食いついてた」と言っていた。

 

次に③について見ていくが、その前にEPC事業の契約形態を解説しておこう。最近はランプサム契約という方式が主流だ。この方式では、プラント設計から建設まで全部でいくらという形で契約する。エンジ会社は人件費から機材費、建設コストまで全部自分たちでマネジメントし、客から貰える金額より安く抑えられた分が儲けとなる。逆に言うと、トラブルがあってプロジェクトが遅れたりすると、プラントを完成させても赤字になる訳だ。この方式では、プラント建設の入札においてエンジ会社が「ウチはいくらでやりますよ」と客に提案して受注を競う訳で、必然的に価格競争になる。

 

上記のような入札の過程があるので、受注時点では黒字になるか微妙な案件でも「実際作業するときに何とかコスト減らせばええやろ」といって受注しちゃったりする。で、海外拠点と分業してコストを安く抑えようとしたのだが、上手く連携が取れずに色んなプロジェクトで赤字になってしまった。一番ひどいブラジルの案件ではプロジェクトがグダグダしてる上に、客先で汚職事件が起きたから対応も遅れ、損失が拡大した。

 

で、これからどうやって立て直しするのって話だが、とりあえず赤字覚悟の無理な受注はしない、拠点を使うのはいいが責任者を明確にするといった対策を掲げている。なお、2015年度の決算は30億の黒字、2016年度も50億程度の黒字を見込んでおり、立て直しは順調なように見えるが、財務状況は悪く、世界経済の先行きは不透明なので、予断を許さない状況が続く。就活生はちゃんと情報を集め、自分の頭で考えるように(財務諸表の読み方もそのうち記事にする予定だから、待っていてほしい)。

 

プラントエンジニアリング業界の年収は高年収?

 

就活生お待ちかねのコーナーだ。いきなりココから読んでる人はいないよな?(笑)

 

2015年度の有価証券報告書から、平均年齢・平均勤続年数・平均年収の順に以下の通りだ。

日揮:43.3歳・17.2年・971万円

千代田:40.8歳・12.9年・932万円

東洋エンジ:43.7歳・18.0年・791万円

 

東洋エンジはやっぱ大赤字でガクンと下がっている。2013年度は889万円あったのだが

 

千代田は2000年頃に一度倒産しかけて人員整理を行ったためか、勤続年数が短めだ。なお、歴史的経緯もあってそのときに三菱商事が助けて以来、保有比率約33%の筆頭株主となっている。

 

ちなみに東洋エンジニアリングは三井化学が源流であり、筆頭株主は三井物産だ。今の三井物産の社長も東洋エンジニアリングに出向していたことがある。

 

で、何を言いたいかっていうと、ビジネスでも給料でも日揮が強いけど、千代田と東洋エンジには総合商社様がついてるってこと。今後経営が傾いた時に助けてくれるかもしれないし、給料の額面以外の福利厚生の部分で財閥系は強いかも。この辺も社員によく話を聞くように。

 

 

プラントエンジニアリング業界の採用選考のポイント

 

 

いよいよクライマックスだ。3社とも経団連の規定は無視して早めに選考を始める。おまけに説明会に行かないと選考に進めない制度だったりするので、18卒の場合は31日以前から行動しておくこと。

 

全体としては数十人採用しているが、職種が細かく分かれており、各職種で見たら数人から十名弱なので、実質倍率は高い難関である。

 

文系は受け入れてないと思うが、理系はどこもインターンをやっているはずだ。17卒のときは夏がメインだったが、冬にもやっていたりするので、本気でプラント御三家を目指す人は必ずインターンに参加しよう。最終的に本選考で合否を決めるのは、応募する職種の部長クラスの人たちで、そこではインターン生の直接の優遇はない。ただ、そこに至るまでの過程で優遇があるので、入社したいと思うならインターンの威力を侮るなかれ。

 

非常に長くなってしまったが、プラント御三家を目指す人にとってはバイブルになるような記事だろう(自分で言うか笑)。それではこの辺で失礼する。

 

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